“内なる声”を聴く時間:セルフコンパッションのすすめ – 自分への思いやりを育む

今日から新たな章に入ります。テーマは「自分との関係を育てる」。これまで、他者とのつながり、触れることの癒やしについてお話ししてきましたが、この章では、もっと静かに、もっと深く、“自分自身”と向き合う時間を大切にしていきたいと思います。

 

初回の今日は、「“内なる声”を聴く時間:セルフコンパッションのすすめ」です。

 

 

自分にかける言葉:無意識の自己批判に気づく

みなさんは、自分に対してどんな言葉をかけていますか?「また失敗しちゃった…」「どうしてこんなこともできないんだろう」「もっと頑張らなきゃ」——

 

気がつけば、心の中で自分を責めたり、追い込んだりする声が響いていませんか?でもその声は、かつて誰かに言われた言葉や、完璧でなければならないという社会の無言の圧力によって、私たちの中に植えつけられたものかもしれません。

 

 

自分との関係:癒やしの大切な土台

ホリスティックヘルスでは、「自分との関係」もまた、癒やしの大切な土台と考えます。外からのケアや助けが届くのは、自分が自分に対してあたたかくあることができてこそ。つまり、自分自身に優しくなれることが、すべての癒やしの出発点なんです。

 

そこでキーワードになるのが、“セルフコンパッション”。日本語では「自己慈悲」「自分への思いやり」とも訳されます。

 

これは、自分がうまくいかないとき、失敗したとき、落ち込んだときに、「なんでこんなことに…」と責めるのではなく、「そんなときもあるよね」「今はつらいけど、大丈夫」と、自分に寄り添う姿勢のことです。

 

 

セルフコンパッションの3つの柱:優しさ・共通性・マインドフルネス

セルフコンパッションには、3つの柱があります。

 

  1. 自分への優しさ: これは、自分を責めるのではなく、友人に接するように、自分にもあたたかい言葉をかけること。たとえば、「今日もよくがんばったね」「今は疲れてるだけかもしれないね」と、自分をいたわるひと言を、自分に贈ってみてください。
  2. 共通の人間性の理解: これは、「みんな同じようにつまずくものだ」と知ること。自分だけが失敗しているように感じても、実は誰もが傷つき、悩みながら生きている。この理解があると、自分を孤立させることなく、穏やかな視点が持てるようになります。
  3. マインドフルネス: これは、今この瞬間に起きている自分の感情や反応を、否定せず、評価せず、そのまま受けとめる力です。「今、私は悲しいと感じてるんだな」「焦ってるな」と気づくこと。それだけで、感情に飲み込まれるのではなく、少しずつ距離を取って見守れるようになります。

 

 

セルフコンパッションは“本当の強さ”:長く健やかに生きるためのスキル

セルフコンパッションは、甘やかしではありません。むしろ、長く健やかに生きていくための“本当の強さ”を育むスキルです。

 

たとえば、疲れ切っているときに「まだまだ頑張らなきゃ」と自分を責めるより、「今は休むときだよ」「しんどいのは当然だよ」と自分に寄り添うことで、かえってエネルギーが回復し、前向きな一歩を踏み出しやすくなります。

 

心が傷ついたとき、癒やしの第一歩は、「痛い」と言えることです。そしてその声に、「そうだよね、痛いよね」と返してあげられる自分でいること。これは誰かに頼ることができないときにも、自分を支える確かな方法になります。

 

 

今日の実践:自分にやさしい言葉をかける

最後に、今日の実践として、ほんの30秒でもいいので、胸に手を当てて、自分にやさしい言葉をかけてみてください。

 

「今日もよくやってるよ」
「そのままで大丈夫だよ」
「つらかったね、でも今ここにいるよ」

 

そんなふうに、自分の内なる声に、静かに耳を傾けてみましょう。

 

自分自身に優しく寄り添うセルフコンパッションは、心の健康を育み、より豊かで充実した人生を送るための大切な一歩となるでしょう。