思考と身体感覚から整える ― 今ここに戻るヒント
私たちの心は、気づかぬうちに“今ここ”を離れて、どこか遠くへ旅してしまうものです。
まだ起きていない未来の不安や、もう終わった過去の後悔――。
うまくいかなかった人間関係、やり残したこと、心残り。
そんな思考が頭の中をぐるぐると回り、気がつけば心も体も重たくなっている……そんな経験はありませんか?
現代人が抱えるストレスの多くは、実は「今この瞬間には存在しないもの」なのです。
未来の心配や過去の傷を、私たちの脳が「今ここ」に持ち込んでしまうことで、心が疲れ、体にも不調が現れてきます。
思考の質が心身の健康に与える影響
では、どうすれば“今”に戻ってこられるのでしょうか?
今日はそのヒントを、「思考」と「身体感覚」という二つの入り口から探ってみましょう。
まずは、思考から整えるという視点から。
ホリスティックヘルスでは、思考の質が心身の健康に大きく影響すると考えます。
頭の中がネガティブな言葉や反復的な思考で満たされていると、無意識のうちに自分の内側にプレッシャーをかけてしまいます。
ここで役立つのが思考の観察です。
例えば、気分が沈んでいるとき、頭の中ではどんな言葉が流れているでしょうか?
- 「私ってダメだ」
- 「またうまくいかなかったかも」
- 「どうせ無理だ」
そんな自動思考が走っていたら、それに気づけただけでも第一歩です。
「今、自分はこういう考え方をしているな」と、評価せずに気づくこと。
この“気づき”によって、私たちは思考と少し距離をとることができます。
思考をコントロールする必要はありません。
ただ、「ああ、また過去に意識が向いてるな」「不安が未来に飛んでるな」
そうやって軽くラベルを貼ってあげるだけで、心は少しずつ“今”に戻ってきます。
身体感覚を意識することが効果的
そしてもう一つの大切な入り口が、身体感覚です。
私たちは、過去にも未来にも存在できません。
呼吸し、鼓動を打ち、重力を感じながら生きている“今”にしか、身体は存在できません。
だからこそ、身体に意識を下ろすことで、私たちは自然と“今”に立ち返ることができます。
例えば、ゆっくりと呼吸を感じてみる。
お腹が膨らむ感覚、鼻を通る空気の冷たさ、胸が上下するリズム。
たったそれだけのことが、脳の暴走を静めてくれるのです。
足の裏が床に触れている感覚、椅子の座面が身体を支えてくれている感覚――。
そうした“今ここ”にある感触に集中すると、不思議と、頭の中の霧が晴れていきます。
忙しいときほど、私たちはこの身体の感覚をスキップしてしまいがちです。
でも、心がざわついているときこそ、立ち止まって深呼吸をしてみる。
それはほんの1分でも、あなたを自分の中心へと戻してくれる“儀式”になります。
気づきの力は育てられる
忘れてはいけないのが、「気づく力は育つ」ということです。
最初はうまくいかないかもしれません。
思考が止まらなかったり、体の感覚がよくわからなかったりすることもあるでしょう。
でも大丈夫。意識を向けるだけで、少しずつ「自分とのつながり」は強くなっていきます。
“今ここに戻る”とは、自分の中心に還ること。
誰かの期待でも、過去の後悔でもなく、
「今、私は何を感じている?」「今、私はどうありたい?」
という問いに、そっと耳をすますこと。
私たちは、何かを変えなくても、今この瞬間に戻ってくるだけで、心が整い始めます。
その力を、すでに私たちは持っているのです。
今日のテーマは「思考と身体感覚から整える ― 今ここに戻るヒント」。
どうか今日のどこかで、ほんの少しだけでも、あなた自身の呼吸に意識を向けてみてください。
その一つの呼吸が、あなたを穏やかな“今”へと導いてくれるはずです。